ドラッカー学習事業 第3回 経営者の条件 第5章・第6章
2006年06月15日
第1部 上田先生講演
テーマ:ドラッカー経営思想の真髄―いまわれわれが越えつつある峠
ドラッカーの考え方というのは、時代はわりと平坦に進み、その後突然何故か解らないが混乱し、また平坦に進み混乱するという、ここ2000年の人類の歴史を見ていると、そういうパターンがあるというのを見つけている事が、ドラッカーの時代認識の一番の特徴である。
1965年から1970年の動きを断絶といい、断絶の時代(大ベストセラー)という本を書いた。その後1989年に新しい現実という本を書いたが、本の書き出しはヨーロッパ大陸やアメリカ大陸の様な大大陸にも峠は有るが、そのほとんどは意味のない峠だが、たまに気候が変わり言語が変わり風俗習慣が変わるというような峠がある。それがヨーロッパではブレンメル峠である。この峠が北欧の文明と地中海文明を大昔から分けてきた。それでドラッカーは歴史にも峠があると言った。
この4年後にポスト資本主義社会という本を書いたが、ポストと言うのは単に後という意味であり、ポスト資本主義社会というのは資本主義社会の後の社会である。それで、ポスト資本主義社会の後に何が有るかが問題で、多分おそらく今の場合、お金が中心だった時代が有ったのか、頭(知本主義)ではないのか、昔は事業をする場合資本がなければ事業が出来なかったが、今は資本中心ではなくそれぞれの才覚で事業が出来る。知本が中心であり、それでその時ドラッカーはこの峠は10年~20年のものではなく、50年~60年である。つまり1965年位から2030年位までは今の転換期は続くといった。でも、皆さんのような立場にいる人は運が良いと思わなければならない。特にこのIT革命の時代ものすごい革命が今起こっていて、その担い手に皆さんはなることができ、またそこにいるという"まれな世代"である。
今大きく変わり始めたのは政治が変わりつつあり、昔は階層があったが今は階層がなくなりイズムによる対立もなくなった。つまり、政治について言えるのはまだ解っている政治家がいなくゴチャゴチャに見え、でも、実際に国民が求めているのは実務能力で、大衆の価値観と政治家の価値観がモダンとポストモダンのように違ってきている。
ドラッカーが一番言うのは、知識が中心の社会にもかかわらず、知識とは何か、教養とは何であるかが明らかではない。一番最後まで時間がかかってしまうであろう。一番最初に明らかになったのは肉体労働の位置づけであり、肉体労働者の社会的地位が下がると共に、人数が減り労働組合が連合に変わり何をするかを模索中である。但し、労働組合は経営側に対してものを言える唯一の力(拮抗力)である。経営には拮抗力が必要である。
今の転換期を知るという意味で後ろを振り返るという歴史の勉強は大事である。
1637年近代合理主義(原因があれば結果が必ず解り暗黒の中世に理性の光が入ってくる)が明らかにし始めた。また、デカルトの言った"我思うゆえに我あり"はこの年である。この後科学は進歩し始め、1700年頃に物を作るのは技能によって作られるが、技能はバラバラでありそれをテクネといいそれにロジー(体系化)が加わりテクノロジーが生まれた。これが技能の技術化であり、その1つの表れとして工具製作者という集団がイギリスに生まれた。(1700年~1750年頃)それがワットと結びつき1776年蒸気機関発明され産業革命をもたらした。産業革命が生み出したのは大量生産で世の中を変えたが、産業革命といわれる由縁は鉄道であり距離を近づけた。また現在のIT革命においてはeであり距離を無くした。経済とはいかに流通を使いこなすかでもある。1900年から1965年は第1次世界大戦、世界大恐慌、第2次世界大戦、戦後の復興があり激動の時代と思われるが、実は継続の時代であり1850年~1900年が激動の時代であった。そして今1965年~2030年というもうひとつの時代"起業家の時代"である。
日本の企業とアメリカの企業の違いはコンサルンの使い方の違いであり、アウトサイドインサイダーで外の目を導入することで、仕事をしている人には見えないものが見えてくると言う事を皆さんもお考えにならなければならない。唯一の正しい答えを手に入れればいいということはなく、つまり何にでも効くような万能薬などある訳がない。
少子高齢化は国が浪費するようになり失敗して、一生懸命働いても生活が楽にならないという事は先進国、後進国ともにあり、子供を生む余力を奪う。税金が高い国は出生率が低いというのがドラッカーの考えである。また少子高齢化はチャンスとしなければならない。ひとつはマーケットとして、ひとつは労働力としてである。
ポストモダンの問題は変だと思っても呂律が回らない。でも、変だと思っている事が正しくポストモダンは言葉にならないがその判断力は正しい。事業においても、ためらう時はそのためらいが正しい。なぜなら全てのものが有機的に絡み合い全てのものを"命あるも"のとして見なければならないのだ。
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第2部:テーマ「経営者の条件」5章、6章
2グループによる討議
(グループ1)
- トップの仕事は今日と違う明日を作り出す事である
- 青工研活動も明日を作り出す為である
- 各自の優先順位は
- 一流たる7つの心得とは
経営者は一人でやるのではなく、何人かで組んで色々な事を組んでやって行く事が大切なのでは、会社において大切なものは"客、キャッシュ、チーム"である。またやらなくてはならないと感じた時は陳腐化する前に、感じた時に行動しなければならない、各自の優先順位は営業や生産など各自違った意見がでた。
(グループ2)
前半は上田先生の講演と本の内容を基にブロック会形式で討議を行った。まず先生が講義で話された「現在は転換期である」との話題から、製造業も時代と共に変化してきているのでは?との問いかけがあり、その一つの例として情報化社会での情報利用については、自社の情報利用だけでなく客先からの具体的な利用方法などが話題としてあがった。また転換期の中で製造業の付加価値や経営理念は変っていくものなのか?
またどう変らなければいけないのか?(環境を考えたもの等)の話も討議された。転換期には重要な意思決定をしなければならない場面が増えてくるが、その意思決定が成果のあるものにする為のアドバイスとして「目標や目的を明確にしなければならない」との意見が出た。また後半は上田先生を交えて以下の疑問や質問に対して討議を行った。
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意味のある成果が上がる意思決定とは?
- 決定とは誰かが、それに基づいて行動してこそ意味のあるものであるから全ての人が理解できるもので無ければならない。
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先を見るコツ
- 動機付け(何をもって覚えられたいか?)を具体的な物にする習慣づけをする事。
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成功会議とは?
- 通常の会議では問題解決や改善の為に時間を費やすが、成功会議では成功した事や結果の出た事を深める為の時間を作ることである。
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5つの質問
- 自社のミッションは何か?
- 客は誰なのか?
- 客にとっての価値とは何か?
- 強みは何なのか?(第三者に聞いてみると良い)
- 何の為に?どうすれば良いのか?